Adult

 

 

 

子どもの頃、大人ってなんで泣かないんだろう、と思っていた。

 

 

悲しいことや辛いことに傷付いて、期待を裏切ったり裏切られたりして、かたくなって、冷たくなって、どんどんどんどん、ごく自然と、泣けなくなるからだろうか。そんなふうに思っていた。

 

 

悲しいことばかり、辛いことばかり、もう嫌だ、要らない、捨てたい、消したい。そんなことばかり思っても、からだは大人になってしまった。後戻りなんて出来なくて、絶望して、彷徨う。

 

 

泣かなくなるのは、泣けなくなるからじゃない。『泣いても泣かなくても大丈夫』、そう思えるようになるからだ。

 

悲しいことや辛いことがあったら泣いたっていいよ、何でもいいから聞かせてよ、そんなあたたかさ。泣くほどやらなくたっていいんだよ、やめたり逃げたりしていいんだよ、そんなすずしさ。そんな清々しい、気持ちのいい足場に立てたとき、きっとひとは泣かなくなるのかもしれない。

 

 

「痛いときは痛いのよ」と笑ってくれた人がいた。きずつけられたときは痛むけど、いつかはなおるのよって、そんなふうに。

 

「全然大丈夫だから、泣かなくていいよ」と背中をさすってくれた人がいた。自ら退いても、終わったりなんてしないんだよって、そんなふうに。

 

 

自分のことばかりじゃなくなったら、このままいきててもいいかなって思えるようになった。たくさん恥かいても、たくさん泣いてもいいよって許せるようになった。それだけです。