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夏の夜、冬の朝

正直者はバカをみない

『黙れ』

 

 

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「あなたになりたい」と、その目が訴えていた。

 

私は彼女より背が高い。ヒールを履く私の足を、彼女はいつも見ている。

私は彼女より化粧をする。新しい口紅を塗っていると、「それ、どこのなの?」と、薄化粧の顔が私の顔をのぞき込む。

私は彼女より気が強い。そんな私が話すことを、彼女はいつも黙って、うなずいて、聞いている。

 

何気なく「そっちはどうなの?」と聞くと、「実はね、彼氏できたんだあ。えへへ」と彼女は笑った。

 

 

 

どっちがいいのかしら。私は自分を持っていると思っていたし、周りにもよくそう言われた。「自分があっていいね」「かっこいいね」そんなことを言われて、気付かないうちに鼻が高くなっていたのかもしれない。

 

誰かに愛されたいだとか好かれたいだとか、そういうのってバカらしいと思わない?私がそう言ったときも、彼女は黙って、うなずいて、聞いていた。

 

 

 

どっちに価値があるのか。どっちが勝者なのか。

 

分からなくなってしまった。

 

 

 

私の話を聞いたら、また彼女は黙って、うなずくのだろうか。

 

 

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