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夏の夜、冬の朝

正直者はバカをみない

『水面下』

 

 

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いやよいやよも好きのうち。きらいは好きの裏返し。大好きだった人のこと、どんどんどんどんきらいになっていく。

 

雰囲気も顔も、声だって可愛くて、自慢だった友達。つぶやく言葉、並べる単語、知れば知るほどきらいになっていく。

 

一目惚れで付き合うことになった彼氏。底抜けに明るくて優しくて、友達も多くて大好きで、知れば知るほどきらいになっていく。

 

 

 

ふと思った。私の心はバケツみたいだ。その人ひとり分のバケツ。好きなところが一滴一滴溜まっていって、いっぱいになって重たくなっていく。水面ギリギリまできたら、あとはこぼれるだけ。持ち運ぶのが大変になって、あとは流して捨てるだけ。だって私の手、ふたつしかないから。限界があるから。

 

そのバケツは使い捨てだから、ぜんぶ捨てちゃったらもうおわり。また一から、なんてことは絶対にない。その頃にはきっと、新しいバケツの持ち手もにぎっちゃってるだろうし。

 

そうして溜めて、流して、捨てて、溜めて、流して、捨てて。残るものなんて一つもない。どんどん空のバケツが積み重なっていくだけ。スッカラカンのバケツ。スッカラカンの私。

 

捨てられないし、やめられない。

 

 

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