シナリオ

『落日に寄せて』

「夏の朝、白い肌着でタオルケットの中から顔を出す日のことを思う。カーテンの隙間から太陽が差し込んで、肌がべたつくような朝のこと。 あなたみたいになれたらよかった。通り雨みたいな人、天気雨みたいな人。憂鬱を吹き飛ばすような、少しにやけてしまう…

『まち』

「ぜんぜんしらないところでいきたい 全然知らないところに行きたい 近所にはスーパーと薬局とレンタルビデオ屋があるところに住みたい パン屋もあったら嬉しい 古本屋もあったらもっと嬉しい 走る車は少なくて 犬を飼う家も少なくて 街灯は少なくないところ…

『放課後のがーるず』

『ハロー、私です。元気にしてる?すっかり久しぶりになっちゃったね。私は元気。雪がとけて、もう少しで春ですね。駐車場のすみに、泥をかぶって真っ黒になったちっちゃい雪山があって、それを見るとなんだかヘンな気持ちになるよ。春風はハダがカサつくし…

『セリフなんて』

_ _ _ _ _ 気怠い身体にスポーツ飲料を注ぎ込んで、パソコンを開いた。 文章を書くことが好きだった。10代の頃、気が付けば手帳のフリーページを字でいっぱいに埋め尽くすのが癖になっていた。日記のようなもの、映画の感想、誰かの名言、好きなバンドの歌詞…

『就寝前』

_ _ _ _ _ 割となんでもどうでもよくなることは結構ある。たまに、とか、時々、ではなく、結構、ある。そんな時、好きな人からの連絡に適当な返信をしてみたり、ずっと続けていたSNSを辞めてみたりする。朝に顔を洗わないでみたり、いつもより目覚ましの時間…

『黙れ』

_ _ _ _ _ 「あなたになりたい」と、その目が訴えていた。 私は彼女より背が高い。ヒールを履く私の足を、彼女はいつも見ている。 私は彼女より化粧をする。新しい口紅を塗っていると、「それ、どこのなの?」と、薄化粧の顔が私の顔をのぞき込む。 私は彼女…

『水面下』

_ _ _ _ _ いやよいやよも好きのうち。きらいは好きの裏返し。大好きだった人のこと、どんどんどんどんきらいになっていく。 雰囲気も顔も、声だって可愛くて、自慢だった友達。つぶやく言葉、並べる単語、知れば知るほどきらいになっていく。 一目惚れで付…

『私は悪くない』

_ _ _ _ _ 「私バカだから分かんないや」とか言い出すヤツが本当に嫌い。そこで線引きをしておくというか、そう言っておくことで許されると思ってんだろ、なんて内心毒づいている。 あの時もそうだった。「俺はお前が心配なんだよ」とか「好きだからに決まっ…

『スマホ』

「結構何年も前から知ってるんだけど、本当にヤバいのよ。何がヤバいって、『バンドマン好き好きアピール』がヤバいのね。ライブ終わったあと、ツイッターとかでわざと固有名詞だすんだよ。固有名詞ってウケるね(笑)ようするに相手の名前を出して、その人個…

『喫茶』

「今日も本当にムカついたんだけどさあ。ほらいつもの。そうそう、あの子ね。なんかあの子っていつも上から目線でプライド高いじゃない?そのくせ人の下に入ろうとするっていうか、何もかも綺麗事で済ませようとするのよね。ほんとムカつく。あ、私コーヒー…